ここまではAndroidの開発方法を学んできました。
ここからは、iOSの開発やAndroid, iOSなど複数のプラットフォームを同時に開発するフレームワークの紹介をします。
iOSネイティブ開発
開発言語: SwiftとObjective-C
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Swift
- 2014年にAppleが発表した現代的なプログラミング言語
- 現在のiOS開発の主流
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Objective-C
- 従来から用いられているiOS開発に言語
UIフレームワーク: SwiftUIとUIKit
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SwiftUI
- 2019年に導入された宣言的UIフレームワーク
- コード量が少なく、プレビューがリアルタイムで確認可能
- 最新のiOSバージョンでの開発に推奨
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UIKit
- 従来からある命令的UIフレームワーク
- 成熟した機能と豊富なリソース
- より細かい制御が可能
開発環境: Xcode
XcodeはAppleが提供する統合開発環境(IDE)で、以下の機能を提供します:
- コードエディタとデバッガ
- インターフェースビルダー
- シミュレータ
- パフォーマンス分析ツール
アプリ署名と証明書
アプリの配布には以下が必要です:
- Apple Developer Programへの登録
- 開発証明書の取得
- プロビジョニングプロファイルの設定
App Store審査プロセス
App Storeでの公開には厳格な審査プロセスがあります:
- 技術的な要件の確認
- コンテンツと機能の審査
- プライバシーとセキュリティの確認
- ユーザー体験の評価
Appleガイドライン
アプリ開発時には以下のガイドラインを遵守する必要があります:
- Human Interface Guidelines (HIG)
- App Store Review Guidelines
- App Privacy Guidelines
- Technical Guidelines
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メリット
- 優れたパフォーマンスと安定性
- 最新のiOS機能へのアクセス
- Appleのデザインガイドラインとの完全な互換性
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デメリット
- iOS専用の開発となるため、他プラットフォーム対応には別途開発が必要
1. クロスプラットフォーム開発の基礎
1.1. クロスプラットフォーム開発とは?
1つのコードで複数のOS(iOS、Android、Windowsなど)で動くアプリを作る開発方法です。
単にクロスプラットフォームといっても、いくつかの種類があります。
1つのコードから複数の実行ファイルをビルドできるもの。
1つのコードから他のコードにトランスコンパイルできるもの。
1.2. メリット
- 💰 コスト削減: 1度の開発で複数のプラットフォームに対応
- 🚀 開発期間短縮: 個別開発が不要で、市場投入が早い
- 🌏 幅広いユーザー層: iOSとAndroidのユーザーに同時にリーチ
- 🎨 統一されたデザイン: 全プラットフォームで同じ体験を提供
2. 主要フレームワークの比較
2.1. Flutter
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技術スタック
- 言語:Dart
- UI:独自のウィジェットシステム
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メリット:
- UIの表現力と美しさ: 独自のレンダリングエンジン(Skia)により、カスタマイズ性が高く、美しいUIを高速に描画できます。マテリアルデザインやクパチーノ(iOS風)ウィジェットも豊富に用意されています。
- 快適な開発体験: ホットリロード・ホットリスタート機能により、コード変更を即座に確認でき、開発効率が大幅に向上します。
- 単一コードベース: iOS、Android、Web、デスクトップで同じコードを共有できるため、開発コストと時間を削減できます。
- 優れたパフォーマンス: ネイティブにコンパイルされるため、多くの場合でネイティブアプリに近いパフォーマンスを発揮します。
デメリット:
- Dart言語の学習コスト: Dartという比較的新しい言語を習得する必要があります。
- アプリサイズが大きめになる傾向: 独自のレンダリングエンジンを含むため、ネイティブアプリと比較してアプリのファイルサイズが若干大きくなることがあります。
- ネイティブ機能へのアクセス: プラグイン経由でネイティブ機能を利用できますが、ニッチな機能や最新OSの機能への対応が遅れる場合があります。
2.2. React Native / Expo
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技術スタック
- 言語:JavaScript/TypeScript
- UI:ネイティブコンポーネント
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メリット:
- JavaScript/Reactの知識が活かせる: Web開発で広く使われているJavaScriptとReactのスキルをそのまま活用できます。
- 巨大なコミュニティと豊富なライブラリ: 長い歴史と大きなコミュニティがあり、多くのサードパーティライブラリやツールが利用可能です。
- Expoによる開発の容易さ: Expoを利用することで、環境構築の手間を大幅に削減し、簡単にアプリ開発を始められます。OTAアップデート(Over The Air updates)も容易です。
- コードの再利用性: Webアプリケーションとコードの一部を共有できる可能性があります。
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デメリット:
- パフォーマンスの問題: JavaScriptブリッジを介してネイティブコンポーネントと通信するため、複雑なアニメーションや処理負荷の高いタスクではパフォーマンスがネイティブに劣る場合があります。
- デバッグの複雑さ: JavaScriptとネイティブコードの両方で問題が発生する可能性があり、デバッグが複雑になることがあります。
- Expoの制約: Expoを利用する場合、ネイティブモジュールを自由に組み込むことが難しく、Expoがサポートしていない機能は利用しづらいことがあります。(Ejectすることで対応可能ですが、Expoのメリットが薄れます)
- UIの一貫性の担保: ネイティブコンポーネントを利用するため、プラットフォームごとのUIの差異を吸収するための調整が必要になる場合があります。
2.3. Kotlin Multiplatform
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技術スタック
- 言語:Kotlin
- UI:ネイティブUI/Compose
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メリット:
- ビジネスロジックの共通化: アプリケーションのコアとなるビジネスロジック、データ処理、ネットワーク通信などをKotlinで共通化し、UIは各プラットフォームのネイティブ言語(Swift/Objective-C for iOS, Kotlin/Java for Android)で記述できます。
- ネイティブUI/UXの最大限の活用: UIを各プラットフォームでネイティブに実装するため、プラットフォーム固有の最高のユーザー体験を提供できます。
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デメリット:
- UIは個別に実装: UI部分は各プラットフォームで別途開発する必要があるため、完全な単一コードベースにはなりません。
- 比較的新しい技術: FlutterやReact Nativeと比較すると、コミュニティの規模や利用可能なライブラリ、ドキュメントがまだ発展途上な部分があります。
- iOS開発者にとってはKotlinの学習コスト: iOS開発者がビジネスロジック部分をKotlinで記述する場合、Kotlinの学習が必要です。
- チーム構成の考慮: 共通ロジックを担当するKotlinエンジニアと、各プラットフォームのUIを担当するネイティブエンジニアが必要になる場合があります。
2.4. .NET MAUI
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技術スタック
- 言語:C#
- UI:XAML
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メリット:
- C#/.NET開発者にとって馴染み深い: 既存のC#および.NETの知識や資産を活かしてクロスプラットフォームアプリを開発できます。
- Visual Studioとの強力な連携: Microsoftの統合開発環境であるVisual Studioで手厚いサポートを受けられます。
デメリット:
- 比較的新しいフレームワーク: Xamarin.Formsの後継ですが、FlutterやReact Nativeに比べると登場からの期間が短く、コミュニティの規模やサードパーティ製ライブラリの充実度はまだ発展途上です。
- パフォーマンスに関する懸念: 一部のケースでパフォーマンスに関する懸念の声が聞かれることがあります。ただし、継続的な改善が行われています。
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Windowsベースのアーキテクチャ:
.NETはWindowsの設計思想に基づいて作られているため、Unix/Linuxベースのプラットフォーム(AndroidやiOS)で予期せぬ動作や互換性の問題が発生することがあります。
- コロナ接触確認アプリCOCAの事例
世の中には様々な開発方法があり、それぞれ良し悪しが異なります。
技術を採用するときは、プロジェクトの要件、チームのスキル、対象プラットフォーム、必要なパフォーマンスなどを総合的に判断して決定しましょう。